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仙台地方裁判所 平成9年(わ)40号 判決

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官新倉英樹出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社山長遠藤商店を罰金三〇〇〇万円に、

被告人遠藤秀二を懲役一年六か月に、

被告人長栄水産株式会社を罰金一二〇〇万円に、

被告人遠藤長榮を懲役一〇か月に、

被告人株式会社サンエー水産を罰金八〇〇万円に、

被告人遠藤榮吾を懲役八か月に、

被告人安達哲夫を懲役一年六か月及び罰金一〇〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人安達哲夫が右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾に対し、この裁判確定の日から各四年間それぞれの刑の執行を猶予する。

被告人安達哲夫に対し、この裁判確定の日から五年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社山長遠藤商店(資本金四〇〇〇万円。以下「山長遠藤」とも言う。)、同長栄水産株式会社(資本金四〇〇〇万円。以下「長栄水産」とも言う。)、同株式会社サンエー水産(資本金一〇〇〇万円。以下「サンエー水産」とも言う。)は、いずれも前記肩書き本店所在地に本店を置き、水産加工及び販売、冷凍冷蔵事業等を目的とする株式会社であり、被告人遠藤秀二は、山長遠藤の取締役として同社の、同遠藤長榮は長栄水産の代表取締役として同社の、同遠藤榮吾はサンエー水産の代表取締役として同社の、それぞれ業務全般を統括していた者であり、被告人安達哲夫は、東京都中央区築地五丁目二番一号に本店を置き、水産物の加工及び販売等を目的とする中松物産株式会社(平成四年一一月五日以前の商号は中松水産株式会社)の従業員であるが、

第一  被告人遠藤秀二、同安達哲夫は、共謀の上、被告人山長遠藤の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成四年三月一日から平成五年二月二八日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億九八三〇万〇三八五円であったにもかかわらず、平成五年四月三〇日、宮城県石巻市千石町二番三五号所在の所轄石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七〇一九万八六九八円で、これに対する法人税額が二三七一万九六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七一七五万七八〇〇万円と右申告税額との差額四八〇三万八二〇〇円を免れた。

二  平成五年三月一日から平成六年二月二八日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億八九三〇万〇七二九円であったにもかかわらず、平成六年五月二日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇〇〇五万六〇四二円で、これに対する法人税額が三五五三万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額六九〇〇万〇三〇〇円と右申告税額との差額三三四六万六五〇〇円を免れた。

三  平成六年三月一日から平成七年二月二八日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億三〇三〇万四三六一円であったにもかかわらず、平成七年五月一日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五七四四万七四三六円で、これに対する法人税額が一九九五万二九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四七二七万四二〇〇円と右申告税額との差額二七三二万一三〇〇円を免れた。

第二  被告人遠藤長榮、同安達哲夫は、共謀の上、被告人長栄水産の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億三六六一万二七七七円であったにもかかわらず、平成五年三月一日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六〇五一万一一八八円で、これに対する法人税額が一九八六万四七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四八四〇万二五〇〇円と右申告税額との差額二八五三万七八〇〇円を免れた。

二  平成五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億二五四五万五〇一八円であったにもかかわらず、平成六年二月二八日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇二五三万九八三三円で、これに対する法人税額が三五九四万七六〇〇である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四四五四万一一〇〇円と右申告税額との差額八五九万三五〇〇円を免れた。

第三  被告人遠藤榮吾、同安達哲夫は、共謀の上、被告人サンエー水産の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が一億三三九七万〇八七五円であったにもかかわらず、平成五年五月三一日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九〇五〇万〇八七五円で、これに対する法人税額が三二五三万二一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四八八三万三四〇〇円と右申告税額との差額一六三〇万一三〇〇円を免れた。

二  平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度における同被告人会社の実際所得金額が九〇七四万六五五五円であったにもかかわらず、平成六年五月二七日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七一五二万一一〇三円で、これに対する法人税額が二五三八万八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三二五九万七四〇〇円と右申告税額との差額七二〇万九三〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

括弧内の甲乙の番号は記録中の証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。

全部の事実

一  被告人安達哲夫の当公判廷における供述(ただし、第一回及び第六回公判における供述は同被告人関係のみ)

一  被告人安達哲夫の検察官に対する供述調書(乙二、三、四、八)

一  遠藤榮喜、金久美子、高成一(甲五五、五七、五八)、石井哲哉、柏木克彦、小林伸和、田家穰二の検察官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲四三)

第一の一から三、第二の一、二の各事実

一  塗茂行雄(甲四五、四六)、柏木眞樹(甲五〇)の検察官に対する各供述調書

第一の一から三の各事実

一  被告人遠藤秀二(甲七二、七三、七七から七九)、同安達哲夫(乙五)の検察官に対する各供述調書

一  遠藤良夫(甲七〇、七一)、遠藤ゆき(二通)、横江ゆう子の検察官に対する各供述調書

一  登記官作成の商業登記簿謄本(甲一)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲九)

一  大蔵事務官作成の架空仕入高調査書(甲一〇)、減価償却費等調査書(甲一一)、租税公課等調査書(甲一二)、交際接待費調査書(甲一三)、簿外受取利息調査書(甲一四)、未払消費税等調査書(甲一五)、交際費損金不算入額調査書(甲一六)、未納事業税等調査書(甲一七)

第一の一の事実

一  被告人遠藤秀二の検察官に対する供述調書(甲七四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲六)

一  押収してある確定申告書一綴り(平成九年押第二一号の3)

第一の二の事実

一  被告人遠藤秀二の検察官に対する供述調書(甲七五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲七)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の2)

第一の三の事実

一  被告人遠藤秀二の検察官に対する供述調書(甲七六)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲八)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の1)

第二の一、二の各事実

一  被告人遠藤長榮(甲八八から九六)、同安達哲夫(乙六)の検察官に対する各供述調書

一  櫻井由美子、小松豊、遠藤道子、遠藤良夫(甲八四から八六)の検察官に対する各供述調書

一  登記官作成の商業登記簿謄本(甲一八)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲二四)

一  大蔵事務官作成の当期製品製造原価調査書(甲二五)、架空仕入高調査書(甲二六)、減価償却費等調査書(甲二七)、租税公課調査書(甲二八)、簿外受取利息調査書(甲二九)、未払消費税等調査書(甲三〇)、未納事業税等調査書(甲三一)

第二の一の事実

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲二二)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の4)

第二の二の事実

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲二三)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の5)

第三の一、二の事実

一  被告人遠藤榮吾(甲一〇一から一〇八)、同安達哲夫(乙七)の検察官に対する各供述調書

一  遠藤初子、平塚善司、木村卓男及び浅沼謹治の検察官に対する供述調書各二通

一  登記官作成の登記簿謄本(甲三二)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲三八)

一  大蔵事務官作成の架空仕入高調査書(甲三九)、減価償却費等調査書(甲四〇)、未払消費税等調査書(甲四一)、未納事業税等調査書(甲四二)

第三の一の事実

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲三六)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の6)

第三の二の事実

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲三七)

一  押収してある確定申告書一綴り(同押号の7)

(法令の適用)

罰条

被告人山長遠藤の第一の一から三、同長栄水産の第二の一、二、同サンエー水産の第三の一、二の行為

法人税法一六四条一項、一五九条

被告人遠藤秀二の第一の一から三、同遠藤長榮の第二の一、二、同遠藤榮吾の第三の一、二、被告人安達哲夫の第一の一から三、第二、第三の各一、二の各行為

平成七年法律第九一号付則二条により、同法による改正前の刑法(以下同じ)六〇条、法人税法一五九条

刑種の選択 被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾につき懲役刑、被告人安達哲夫につき懲役刑及び罰金刑

併合罪加重 刑法四五条前段、被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾、同安達哲夫の各懲役刑につき刑法四七条本文、一〇条(被告人遠藤秀二、同安達哲夫につき犯情の最も重い第一の一、被告人遠藤長榮につき犯情の重い第二の一、被告人遠藤榮吾につき犯情の重い第三の一の罪の刑に、それぞれ法定の加重)、被告人山長遠藤、同長栄水産、同サンエー水産、同安達哲夫の各罰金刑につき刑法四八条二項

労役場留置 被告人安達哲夫につき刑法一八条

刑の執行猶予 被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾の刑及び被告人安達哲夫の懲役刑につき刑法二五条一項

(量刑事情)

一  本件は、被告人遠藤秀二が山長遠藤の、被告人遠藤長榮が長栄水産の、被告人遠藤榮吾がサンエー水産の、各法人税納入につき、いずれも被告人安達哲夫と共謀の上、被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾らが、架空仕入れに計上する金額、品目、数量等を自分で調整確定の上、それらを被告人安達に連絡するとともに、架空仕入れ分について在庫量等を操作するなどし、被告人遠藤秀二らからの連絡に基づいて被告人安達が架空仕入先を手配し、虚偽の関係書類を整えて真実の仕入れを装うなどの不正の方法により、脱税したという事案である。

二  被告人遠藤秀二は、山長遠藤の専務として、会社資金を留保するため脱税しようと企て、同業者である叔父の遠藤榮喜に相談し、その紹介によって知った被告人安達と共謀の上、その指導、助力を受けて、平成五年二月期から平成七年二月期までの三期にわたり合計一億〇八八二万六〇〇〇円を脱税したもので、犯行の手口も極めて計画的かつ巧妙にして、脱税額も膨大な額に上り、本件一連の犯行の発端をつくったという点においても責任は重大で、被告人山長遠藤の責任も、仕入先の関係者をも巻き込んだ犯行で、業界の適正納税に対する信用を大きく害した点をも考えると、重大であるといわなければならない。

しかしながら、そのほ脱率自体は平均五八パーセントとそれほど高率ではないこと、遅ればせながら、同社は本件脱税に係る収入等について修正申告をするなどして関係する税金を完納していること、被告人遠藤秀二は、これまで前科がなく、本件後専務の地位を辞しており、代表取締役の遠藤榮之が経営の適正化を図ることを約していることなど、有利な事情もある。

また、被告人遠藤長榮は、遠藤秀二から話を聞き、同じく遠藤榮喜の紹介によって知り合った安達と共謀し、同様の手口で平成四年一二月期及び平成五年一二月期の二期にわたり合計三七一三万一三〇〇円を脱税したもので、その犯行態様も前同様にして悪質にして脱税額が高額にのぼることから、被告人遠藤長榮及び同長栄水産の責任も重大である。

しかしながら、その平均のほ脱率は約四〇パーセントと高率ではないこと、同社も本件後脱税にかかる収入等について修正申告をして、関係する税金を完納していること、今後についても、在庫管理を改めるなど経営形態を改善して、再過なきを期していることなど、有利な事情もある。

次に、被告人遠藤榮吾も、遠藤長榮から話を聞き、同じく遠藤榮喜の紹介で知り合った安達の指導、助力を得て、同様の手口で、平成五年三月期と平成六年三月期の二期にわたり、合計二三五一万〇六〇〇円を脱税したもので、その犯情も悪質にして、被告人遠藤榮吾及び同サンエー水産の責任も重い。

しかしながら、そのほ脱率は平均約二九パーセントと比較的低率であること、本件発覚後、脱税にかかる収入について修正申告し、関係する税金を納付していること、被告人遠藤榮吾にもこれまで前科がなく、本件を十分反省していることなど有利な事情もある。

これらを総合考慮すれば、それぞれ各被告人会社については主文のとおりの罰金刑に処し、被告人遠藤秀二、同遠藤長榮、同遠藤榮吾については、それぞれ執行猶予付きの懲役刑に処するのが相当である。

三  被告人安達は、親交のある遠藤榮喜の依頼があったとはいえ、他の被告人らの脱税に加担し、架空仕入れについて、仕入先を手配し、関係書類を用意するなどして、本件各脱税について不可欠かつ重要な役割を果たしていること、そのため同被告人の配下の者ら多数の関係者を犯行に巻き込んで、水産物加工業界の信用性をも大きく傷つけたこと、同被告人が関与したことによる脱税額の合計が一億六九四六万七九〇〇円という膨大な額に上っていることや、本件各犯行によって同被告人は四〇〇〇万有余の現金報酬を得ていて、その使途についても格別酌むべきものはないこと、本件発覚後においても罪証隠滅工作を図るなど、この種事犯に対する法軽視の態度もうかがわれることなどをも考えると、その責任は極めて重大で、再犯のおそれも少なく、業界で模倣性の強いと思われる犯行態様であることをも考えると、一般予防のために、厳罰をもってこれに対処し、本件について同被告人を懲役の実刑に処することも十分考慮に値するところといわなければならない。

しかしながら、本件は、そもそも、同被告人が、懇意にしていた遠藤榮喜の依頼を受けて、相被告人らのために犯行に関与するに至ったものであること、結果的に、本件のほ脱率自体は、平均で約四七パーセントに止まり、脱税分についても、前記のとおり、各被告人会社において修正申告して納入していること、被告人安達も、本件報酬収入等について修正申告してこれらを納税していること、同被告人も、最終的には、本件犯行の全貌について率直に供述し、反省の態度を示していること、これまで前科がないことなど、同被告人に有利な事情もある。これらを総合考慮すれば、同被告人に対し、懲役刑については刑の執行を猶予するとともに、本件が、経済的利得を目当てに敢行されたもので現に高額の利得を得ていたことをも考えると、罰金刑を併科して、一般予防及び特別予防をはかるのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑-山長遠藤につき罰金三〇〇〇万円、遠藤秀二につき懲役一年六か月、長栄水産につき罰金一二〇〇万円、遠藤長榮につき懲役一〇か月、サンエー水産につき罰金八〇〇万円、遠藤榮吾につき懲役八か月、安達哲夫につき懲役一年六か月及び罰金一五〇〇万円)

(裁判官 千葉勝郎)

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